「新しい釣漁業の技術」山下楠太郎
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る海藻のひらひらする音や、柔らかい釣糸、固い音を発しないものには魚の集る率はよいのでありますこのように現在のワイヤーの持つ欠点をカバーして各種の漁業や耐酸化、耐海水、耐老化、耐磨耗、耐電蝕、耐腐蝕、耐潮流の抵抗等を研究し開発されたものが、ソフトワイヤー、エースワイヤーであります。①ソフトワイヤー(比重5)は、柔らかい粘着性の特殊合成樹脂を溶解し、従来のワイヤーの上に真空圧着し完全にワイヤーの撚りの一本一本に深く惨透せしめて固めたもので、先に述べたワイヤーの欠点を全部改善したものであります。神奈川県水産試験場、水産庁漁船研究室に依頼して試験された結果によると、のソフトワイャーの合成樹脂接着部は、吸水が微量であるので、耐用年数が長い。⑥キンクにならない。い切断時に撚りがほぐれない。㈲水抵抗が柔和で、且つ抵抗が少ない。㈹従来のワイヤーとソフトワイャーを海水中に漬けて腐蝕試験してみると錆の出ることが四倍遅く、約81どういうわけか鮪があまり喰って来ないとのことで何回か使用してワイヤー独特の金属性の色がなくな『て来てからの方が鮪の喰いはよいようであると云う。海水の色、魚の棚の水色、その他の事情などに関係があるのではないかと想定されます。それから第一編第一章に述べた金属音についてだが、私の研究所で神奈川県水産試験場の方々や各大学水産学部の先生方と試験をしてみました結果、魚は金属の音がきらいであるということが、断言できる。これは相当に釣獲率に関係することで、ワイヤーで釣るとそのワイヤーに水流があたり、魚が引張ることにより、金属線の振動する音が海中にばらまかれて、他の魚は一匹もその釣れた魚のあとからついて来ません。同じように、石を魚の群に投げ込んだり、木片を投げ込んだりした時は、一度魚は散りますが、又、集ってまいります。ところが金属の鎖のようなものや、金棒を海中でたたくと、魚はびっくりしてその場から逃げてしまって、二度と集まってはまいりません。柔らかい水中音をただよわせ

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