「新しい釣漁業の技術」山下楠太郎
38/194

くに群団をなして回溢をしております。これはすべての魚が、多数の仲間が群集するというだけの簡単な方法で、敵の攻撃から身を守ることができるからであります。又、たとえ敵におそわれても最大の生存数を確保できる。集団の力により相手を恐れさせたり、たじろがせたりして追い払う事すら可能であ40ナイロンテグスります。かりに大型の魚がおそって来ても集団の力で一匹一匹ばらばらであるよりはるかに強い防御力を発揮するのであります。又、小型魚の様な場合には数千数万の群体がダンゴの様にかたまり個体化したり球状にかたまったり、すり鉢状に海面へ浮き上がったりして、害敵にさらされる魚は、群全体からみれば割合い少数である。取りのこされてうろうろしているようなものを害敵は攻撃して捕食しているのであります。こうした海の自然の生存競争が連日連夜行なわれているにもかかわらず、人間はただ一尾の餌で、魚群の気持ちを船に引つけ多く集めて釣ろうとしています。これがそもそもの間違いであります。従来のように曳細に一匹やせいぜい十五、六匹のエサを付けて曳いた場合、一匹の魚がかかったら他の魚は餌にあぶれて散ってしまうことになり、又、口を切らして逃げたりすると、他の魚群と一緒に逃げ去ってしまいがちであります。サバや、カツオなどをはじめ魚を寄せ集めるのに「こませ」や生き餌を数多く撒くことはなされていますが、曳細や、延細漁法に於いても餌を多く見せることは同じく必要で、餌になる魚群が、その害敵たる魚群に追われて逃げ廻っているように、見せかけることが必要であります。そう個体化して、敵に備えます。集団の力と本能(索餌、防御、産卵)とにより、

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です