「新しい釣漁業の技術」山下楠太郎
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ます。これはイカや小魚を誘導するに役立つ小魚類の瀞泳音、呼吸音、捕食音、わきびれの音などの、魚の好む音を出すために取付けるのであります。これで三つの好条件が生まれました。さて、ここで従来のイカ角の構造を考えてみると、一番先に目につくことは鉛が釣針の部、即ち下部についています。これは、イカ角を沈下せしめるためだけに考えたことでありましょう。これでは船上からイカのいる層に、イカ角が沈下するときに、又船上から動かすとき、動きがたらなくなるのであります。そこで図②のように斜線の部分に鉛を入れるわけです。上からイカ角を沈下したり、動かすとき、上部が重いイカ角は、どのように動くか、これはもうお判りのことでしょう。右に左に八方にゆらゆらとよく動くのは当然であります。これで好条件が四つになりました。さらに、イカ角の合成樹脂の柔かい表面や、その樹脂の中に、きらきら光るアワビの貝や太刀魚のウ93らかい糸で鉛の上を巻いたり、イカの身や、小魚、布切などをイカ角にまいて使用している漁具が多々あるわけであります。大体、今日迄のイカ角は固すぎるとおもいます。あの様に固いものでは魚の習性に適合していない。山下式は、角自体をやわらかく、その上に現在十六本ずつ二段になってついている釣針を、半分以下の十本か八本に少なくして、それを一段にしてあります。(図仙)・針が二段になっていることは、ついたイカの足がちぎれたり、体をきらしたりして逃げることを防いでいるものでありますが、針というものは無い程、イカにしてもその他の魚類にしても、餌付きのよいのは明白であります。そこで、針がこれ以上少くならない最少限の本数にしてあります。この様にすればイカの餌付きは当然よくなる筈であります。柔かいという好条件、針数が少ないという好条件が二つ重さなります。その上に図⑧の皮膜を、図の中心に、図のように取付け

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