「新しい釣漁業の技術」山下楠太郎
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環境に対しての保護色に近い状態」をなしています。太陽光線や、この七色の光りに基づいて、即ち、日常われわれの大気中における色彩観念をもって水中の色彩を考え、漁具の作成を行ったのでは大きな間違いとなります。サメを除く殆んどの魚は、前述の如く色を識別する。目の神経細胞には、色を識別する円錐体と、おもに、夜中に使われる円柱体とが充分に分布されております。魚は自分の仲間を見分けたり、お互の精神的、肉体的の状態を表面に現わすのに、主に体色の変化や、体全体の動きにより示し合うようです。カツオが狂ったように餌付きを開始した時にみせる体側に出来る横縞、シイラが釣針にかかると、黄色や銀灰色や金色や様々な色を体全体に表わしたり、鯛やメジナが薄水色の点々(輝点)を備え、その体を曲りくねらせる時に発するその輝きや光により、仲間同志で認識し合ったりするなど、殆んどの魚は、色や光りには特に敏感な反応を示すのであります。29太陽が輝き、赤、燈、黄、緑、青、藍、童の七色の光を投じていますが、海水中に入ったこれらの光線の中、長波長(六五○ミリミクロン)を有する赤色光線は、先ず海面一一、一一一緬のところで、半分位吸収され、五六十米では全く消失してしまい、やがて燈色や黄色もなくなり、短波長(四五○ミリミクロン以下)の不思議な青色一色の神秘な世界を、タイなどのような赤い魚は黒っぽい色で浦泳しているのであります。海藻などは、一般に反対色の光線を吸収して、太陽のエネルギーを最大に取り入れ、光線によって葉緑素を生み出し、同化作用を都合よくさせている。例えば緑藻類は太陽の赤色光線を吸収しやすい海の表層近くに分布し、それとは反対に、紅藻類は深い中下層に分布しています。魚の体色は、表層にいるものは背は青又は緑、腹部は白銀色にキンキン光沢を発し、中、下層のものは、赤色、茶、又は黒色、灰色などを帯び、深海のものは、ドス黒く、又は自ずから発光器をそなえたり、キンキン刀のやうに光ったものなど、「自然の

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