「新しい釣漁業の技術」山下楠太郎
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ら魚群に出合にくやしい思いをすることがしばしばあります。これとちがって、本漁法では一匹がシャブリに喰いつけば、その動きで他のシヤブリが本物のように動く。一’一一割まぜた釣針に魚がかかればますます擬餌はよく動き、魚は狂ったようになって餌付き、船付きは一層よくなるわけであります。船の回りに取付けた誘導漁具l例えばタコの足の先端が、あまり水面に近すぎると魚の抵抗が強くなり、道具全体や擬餌を傷めます。ローリング、ピッチングしたとき、下端が水面すれすれになる位が最適であります。ところで、前記の如く、この漁法には、無人釣漁法が併用されている。従来から、三貫目以上のピンナガの竿釣り漁獲は一本の餌に二本又は一一一本の竿がつき二人乃至一一一人で釣るため、実際に釣り上げる魚の数が少ない上に、ビンナガは口が弱く、釣り上げるうちの一一割位は釣り落しがある。また魚体の釣り上げに困難な、水面から高い、船首にある槍出の釣台付近は、ほとんど利用されておらず、ほとんど船の中央に集まって竿169人には曳細の操作が終らないうちは、竿を持『て他の人と競争して釣り上げる気持ちを起こさせないようにしなければなりません。とにかく、曳細によ『て餌付きのよい魚群を見付け、魚が竿にかかり、誘導漁具や無人釣りが活躍をはじめるのですから、曳細係の仕事は重要な任務であります。この方法は東海大学の海洋学部の井上元男教授が、私と協同で昭和三十年頃より研究し、各船に普及してきましたが、今日のように省力化の叫ばれていなかった時代でもあったせいか、一時中絶いたしましたが、枕崎方面の船主の方や静岡の船主の方々より絶賛をいただいております。部品やその他の改良も充分出来た今日、大いに実用化の望みが出てきた漁法であります。従来から何百バケツの生イワシを船内に収容し、漁場においてこれを撒いて魚群の餌付き、船付きをよくしてから、竿で釣る漁法が行なわれていますが高水温で餌イワシを死滅させたり、使い果たしてか

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