「新しい釣漁業の技術」山下楠太郎
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うわけであります。だから飛び込んで来てくれたり、たまたまポンプの口が近くに突然に近よ『たりしない限りは、簡単に吸い上げは出来ず、生きている魚の吸い上げは困難ということになるわけであります。前章の電撃によって仮死状態のようになったものや、池の中の魚のようなものには可能であって、ソ連では電気刺激と光とを併用して漁獲によい成果を上げています。わが国でも、アジやコウナゴについて実験はやられていますが、この場合は集魚燈の併用がされています。しかし光に集った魚のそばへポンプの吸入口が近づくと、やはり、せっかく集った魚が散ってしまって、うまくゆかなかったようです。勿論、集魚燈の光の強弱、光線の色彩などもいろいろと取替えてやってみたし、ポンプの吸入口も上や下や、さまざまな方向に変化してみてやったのでありましょ声フ。初めての仕事に手を付ける人達にとって失敗はもちろん、つきものであります。失敗に失敗を重ね、64現在一般に使われているポンプと同じ原理のものであります。しかし思うようにはいかない理由は、魚の場合や貝の場合、魚体が傷つかないようにしなければならないからです。現在では普通の魚ならば、口径の二’三倍、うなぎのようなもので口径の六、七倍の体長のものでも、生きたままで漁獲できるように改良されてきてはいますが、相手は魚という生き物でありますから、習性、生態に合せた方法をとらなければならないのは他の漁具漁法と同様なことです。どんな性能のよいポンプでも流速には限度があり、吸い込み口の入口近くは相当に流速が強くても、遠くになればなる程、水の流れはゆるやかになってしまいます。五センチ位のァジの場合でも流速が毎秒二メートル十センチの速さでポンプ内を流れているのにもかかわらず、吸い込み口より一一寸位に近寄ったものでないと容易に吸い込みが出来ないし、魚には潮流に逆に向って溢泳する習性がありますから、吸い込み口から遠くへ、遠くへと、泳いで行ってしま

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