「新しい釣漁業の技術」山下楠太郎
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く、大陽光線の光により綿糸自体の影を水面下まで投影し、魚の餌付きを悪くする甚だ不適切な漁具と云えます。魚は水中で横になってたれ下ったり、流れたりするものには不安を感じ、仲々そばへ寄ってきません。一本釣りの時でも、幹糸の角度が水面に直角になってたれていればいる程、魚の喰いはよく、幹糸が潮流その他で横になればなる程、その喰いはわるくなります。特に、鮭。鱒延細の枝糸と幹糸の距離は、枝糸の一メートルという規制のために、そのへだたりが短かく、漁具としての適正をますます欠いでいます。これらの難点を解決するために、私は、ナイロンテグスを三本組糸にしたものを幹糸に使用するのであります。大体ナイロンテグスの一分か一分二厘位のものを三本組みますと、弾力があり、たぐりやすく、綿糸の欠点である撚りがなく、従『て枝糸の幹糸にからまることを完全に防止し、もつれがなく、水切れのよい幹糸として、その操業上に及ぼす利点153この規制からしても、出来るだけ鮭鱒が釣れにくいようにという内容が明らかであります。そこでこの規制内で漁具を考えてみると、第一に幹細に対する規制がないことが上げられます。現行の幹縄は綿糸の二十二号位のものが使用されていますが、私の経験では、どのような漁法においても、綿糸ばかりでなく撚った糸は使用しないことが常識になっております。なぜならば、撚糸は片一方の方にぱかり撚ってあり、強く張られたり張りがゆるんだりする揚細の際には、綿糸の撚りのように細自体がよれてしまいます。魚の掛った枝糸は別としても、ほとんどが幹糸にもつれてからまってしまい、他の技糸の手のほどこしようがなく、漁具を捨ててしまったり、さばくのに手数がかかったり、切断して、よいところだけを使用したりして、次の操業まで大わらわで、その補修に、貴重な人手や時間を費すことになります。その上、綿糸は水面近くの漁法においては、不透明で魚の警戒心を誘発し、視覚の点からも見えやす

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