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Meister’s Academia マイスターズ アカデミア

講師:フィッシングマイスター川上英佑

第1回 ALL ABOUT春エギングVol.1 〜春エギング入門〜

春エギングとは?

アングラーの少ない磯場を狙うのもひと手。狙いづらい分、
フレッシュなイカが多い

————今回からスタートする「マイスターズ アカデミア」は、「マイスター」と呼ばれるYAMASHITA&Mariaが誇る凄腕スタッフにルアーフィッシングやエギングにまつわるハウツーを教えてもらおうという新企画です。その第一回は、エギング部門きっての理論派、川上英佑さんに、これからスタートする「春イカ」「春エギング」についてお話を伺っていこうと思います。川上さん、よろしくお願いします。

川上(以下、川) 皆さん、はじめまして。川上です。よろしくお願いします!

————では早速、質問に入りたいと思います。まず最初に「春エギング」の魅力とはズバリ何なのでしょうか。秋イカはやるんだけど、というアングラーの方も多いのではないかと思うのですが。

 はい。やはり春のエギングの一番の魅力というのは、身近なポイントで驚くほど大きなイカが釣れることですね。

————なるほど。ちなみに、どれくらいの大きさのイカが釣れるのでしょうか?

 秋イカが手のひら~500mlのペットボトル位のサイズが中心とすると、春はその数倍、胴の大きさで30cm~40cm、重さにすると1kg前後がアベレージ、3kg級の超大物まで狙えます。

————ずいぶん大きいですね。その分、数のほうは釣りづらくなるということでしょうか。

 そうですね。絶対的な個体数が違いますからね。ただ、世間一般で言われているほど難しくなくて、キチンと春イカの特性を理解すれば、自ずと釣果はついてきます。

————春イカの特性ですか。

 はい。例えばポイント選びを例に挙げれば、秋のエギングは、港の中でも港の外でもどこでもアオリイカが釣れます。ですが、春はなかなかそうはいかないんです。春に釣れる場所は秋でも絶対釣れます、しかし、秋に釣れた場所で春に釣れるとは限らないんです。春のアオリイカは産卵を意識しており、効率よくエサを獲りたいという意識が強いため、ベイトフィッシュの集まるポイントや、アマモ、ホンダワラ、カジメなどの産卵に適した海藻が生い茂っている場所に集まる傾向があります。

ピンポイント狙いが春の特徴

潮通しが良く、イカが最初にコンタクトする
岬周辺は特に狙い目だ

————なるほど。ベイトと海藻ですか。他に、春イカのポイント選びについて、何か意識しておいていいことはありますか。

 アオリイカも魚と同じで潮に乗って回遊する生き物です。そのため、新しい潮があたる場所、岬、堤防の先端、外洋に近い場所なんかがいいですね。ポイントやレンジもしっかり把握する必要があります。春イカは賢く、警戒心も強いので秋イカの様にエギを長い距離追う事は少ないです。秋イカは割とエギを表層までビュンビュン動かして広範囲を誘うことが多いですが、春はボトムから中層を狙い、そしてピンポイントにしっかりエギを通すことが釣果アップにつながります。

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————なかなかシビアな釣りですね。

 確かに秋に比べるとシビアですね。最初はエギをしっかり沈めてあげて、複雑なロッド操作にとらわれずボトムから中層までのレンジを探る、これを意識したらいいと思います。これだけで、連続ヒットなんてことも十分ありますからね。

————連続ヒットですか。ということは、春イカも群れで行動しているのですか。

 そうですね。ダイバーさんに聞いた話ですと、小規模ですと5、6杯、大規模ですと数十ハイ。稀に何百杯という規模もあるみたいですね。

————それだと辺り一面イカですね。そんな群れに遭遇したいものです(笑)。

 まったく遭遇したいものです(笑)。

春イカのシーズンとは

ナーバスな春イカの警戒心がゆるむマヅメ時。
ヒット率が一気に高まる

————ところで「春イカ」といいますが、シーズンはやはり4月くらいからなのでしょうか?

 もちろん地域によって異なりますが、一般的にもっとも釣りやすいのは4月の末くらいからです。ゴールデンウィーク前後が、ワッと盛り上がる時期ですね。春になると「人」は気温で春を感じ始めますよね。でも「海の中」は少し違います。水温は外気温よりも暖かくなるのが遅いんです。そのため春に入り、気温が上がり始めた頃でも、水温はまだ低い状態です。

————アオリイカの適水温になり始めるのが「4月の末くらい」ということですね。

 そうです。

————水温でいうと、どれくらいがベストですか。

 17〜18℃くらいですね。他の生き物の動きに注意すると、アオリイカのシーズンを見極めるのにとても参考になりますよ。

————どんな生き物ですか。

 17℃~18℃で活発に産卵活動を始めるのがクロダイです。いわゆる「乗っ込み」ですね。その少し後にアオリイカのベストシーズンが始まります。

————なるほど。それはわかりやすい。釣り新聞やスポーツ新聞で、クロダイの乗っ込みの情報を目にする機会は多いですからね。それを参考にすれば、イカの接岸状況もわかると。

 一応水温を基準にしておいて、そこにクロダイ等の動きを加味していくと、精度が上がりますね。

個体による誤差も

————ちなみに、アオリイカはすべての個体が一気にそのタイミングで産卵を始めるのですか。

 それがそうでもないんですよ。アオリイカの産卵、孵化のタイミングは、個体によって随分とズレがあるんです。親イカの産卵のタイミングが早かったイカは早く生まれて、早く大きくなりますが、親イカの産卵が遅かった個体は、成長も遅くなる傾向にあります。そのため、春イカを狙っていても手のひらサイズ~500gくらいの小型が釣れることもありますし、春イカといっても夏くらいまで大型を狙う事が出来たりもするんです。

————では、シーズンは7〜8月までといったところでしょうか。

 漁師さんから、7月8月にめちゃくちゃ大きいイカがいっぱい接岸しているぞ!って聞くんですよ。ただし、この時期はなかなか釣りづらいですね。産卵行動に入ってしまうと、エギに反応しにくくなりますから。ですので、6月一杯位までが狙いやすいシーズンですね。

————なるほど。ここで、春イカが接岸するまでの過程を少し伺いたいのですが。

 はい。秋に生まれたアオリイカは、基本的に産卵前の冬場は深場に落ちていますが、春に向けてそこから徐々に浅場に上がってきます。船からのアオリイカ釣りはダイレクトに水深のある場所を狙うため、シーズンは岸釣りに比べて早いのですが、その水深が「今日の水深20mでした」「今日は10m」といった具合に少しずつ浅場に移動していくんです。そして船宿さんの情報でポイントが10m前後の情報が増え始めた時が、岸釣りのシーズンのスタートの目安です。

————こちらも、スポーツ新聞などで確認できそうですね。少しこの点に関して質問ですが、水深があればシーズンインが早いということは、岸釣りでも急深なポイントでは少しシーズンインが早いということでしょうか。

 そういうことです。ただし、深いだけではなくて「道」になっているような場所を見つけると釣果は飛躍的に上がります。基本的に深い所から浅い所へは道があるんですね。そういった道を通って、どんな魚もイカを浅場に上がって来るんです。

————「道」ですか。

 これは世界共通ですが、海図を見せてもらうと、例えば水深1000mから浅場まで立ち上がるような場所では、溝のようなものが必ずあるんですよ。こういった場所はイカも本当によく釣れます。人間も断崖絶壁を登るよりは多少なりとも道になっている所を通りますよね。イカもそれと同じです。海図をチェックして、自分だけの爆釣ポイントを見つけるのも面白いですよ。

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